Inscryptionで久しぶりに原初のカードゲーム体験をした(ネタバレなし)
カードゲームに手を出したのは、小学生の頃だった。
キラキラ輝くパックを剥くと、現れるのは更に眩しく光るカード。
かっこいいモンスター、おどろおどろしい妖怪、美麗な風景。そして小さな枠に分かれて記された体力、パワー、能力、コスト。スタイリッシュに詰め込まれた情報すらカッコよかった。
小さなカード1枚1枚にワクワクした。
初めて見るカードにはまず見惚れ、その能力を読んで驚き、考え、どんなデッキを作るかを夢想した。
シンプルに強いパワー。何ができるのかわからない能力。カードを知るたびに、世界が広がっていった。どんどんのめり込んでいった。
それでもまだまだ世界は広大だった。
パックの中からは次々に知らないカードが登場し、それこそ無限に新しいカードが出てくるんじゃないかと思えるほどの奥深さ。友人が自慢気に見せてくる知らないレアカードにもワクワクしていた。
目の前に広がるカードゲームの世界を、純粋に楽しんでいた。
…………
……
それがいまやどうだ。
新しいカードゲームを始めようと思ったら、やれ環境デッキだの、やれ害悪カードだの、リセマラだの。
インターネットで調べればカードリストやランク表が1発で出てくるし、強いカード弱いカードは既に誰かが答えを出している。
それは新しいカードゲームだろうと。「MTGで言うとこいつはラノワールのエルフ」「こいつはブラン・ブロンズビアード」の一言で片付いてしまう。
召喚酔いしない、カードを墓地から戻す、コストを下げる……どこかで見たことのある効果のカード。よくあるテンプレのデッキタイプ。
それを問題だと言うつもりはない。論理的であるべきカードゲームにおいて、情報の共有や効率化は大事なことである。
だからこれは、ただ単に俺がカードゲームに慣れすぎてしまっただけのことだった。新鮮さを感じる心を失ってしまっていた。
……子供の頃に遊んだ、原初のカードゲームの楽しさ。
熱中してしまうほどのワクワク感を、もう一度味わえたなら。
それが叶ったのが、10月20日に発売されたカードゲーム、「Inscryption」だった。
これがどんなゲームか?と聞かれて、どうしようもなく答えなければならないなら、「Slay the Spireみたいな、デッキ強化型ローグライクカードゲーム」と答えるだろう。
だが、Inscryptionはそんな言葉で表すべきゲームではない。
前情報なしで遊んだInscryptionは、カードゲームでしかできない表現で、演出で、プレイヤーをドキドキワクワクさせてくれる、本当に素晴らしいカードゲームだった。
あの頃感じていた、カードゲームのワクワク感。次はどんなカードと出会えるのか楽しみで楽しみで仕方なくて、世界に引きずり込まれるような感覚。
ランダムかつドラマチックな展開に驚き、笑い、ドキドキしたあの瞬間。
そんな瞬間があなたにもあったのなら、ぜひプレイしてみてほしい。